本のなかの社会

本を読む  富裕層に富を集中させれば経済が成長する なんて書いてある  なんというまやかし そう思ったら もうその先は読めない 違う本を読む  豊かさをもたらすのは資本主義なのか コミュニズムなのか なんていう文章に行き当たる  えっ その二択? そんな疑問が頭をかすめ 読むのを止める 今度こそと思いながら 話題の本を広げる  社会における生産活動の水平的共同管理 なんて書いてあるのを見て 嫌悪感を抱く  生きていくのに必要とされる様々な生産‣消費活動を行う領域「必然の国」 も  芸術 文化 友情 スポーツ等の人間らしい活動を行う領域「自由の国」 も 嫌だ 飲み屋ばかりの「赤羽の国」や 風俗店が並ぶ「西川口の国」のような 猥雑で 垢ぬけていない感じのほうが 「必然の国」や「自由の国」より ずっといい 混んだ飲み屋では 知らない人たちが からだを斜めにして並んで立っていて(それをダークダックス飲みというらしい) タバコの吸い殻は床にポイ捨て 正しいことしかしないなんていう人がいないように 悪いことしかしないなんていう人は(たぶん あまり)いない ひとりひとりが正しさと悪さを身に纏い 立派な人生と サエない人生を 同時に送る 「必然の国」や「自由の国」も特別でなくて 昼しかないような人なんて いなくて 夜しかないような人なんかも いなくて 悩んで生きる普通の人がいるだけ 人が生きている社会は キャピタリズムでもコミュニズムでもない 人が人らしく生きているところに イズムはいらない